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サンウルブズは、最初から孤独な狼だったのか?

サンウルブズ、スーパーラグビーから除外!!

先日発表された、日本のスーパーラグビーチーム『サンウルブズ』が、SANZAARによって2021年以降の、スーパーラグビーから除外されたという知らせに落胆している。

実はスポーツチームのファンになって、特定のプロスポーツチームを応援するのというのは初めての経験だったので、すごく残念に思っている。

初年度の堀江、稲垣、カーク、田村、立川、山田らの活躍を皮切りに、福岡堅樹、ジャバ・ブレグバゼ、ヴィンピー・ファンデルバルト、ラーボニ・ウォーレン・ボスアヤコ、ツイ・ヘンドリック、リーチ、流、内田、田中、茂野、松田力也、ヘイデン・パーカー、マイケル・リトル、ホセア・サウマキ、ファンデンフィーファー、最近では姫野やリーチ、カラ・プライアー、ベン・ガンター、レレイ・マフィ、シェーン・ゲイツ……など、大勢のプレイヤーの活躍もあって、とても楽しみなチームになってきていた。

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もちろん、勝ちはまだまだ少ない。しかし確実に強くなってきていた。

にも関わらず、たった5年で撤退。無念でならなない。

SANSAARの南アに追い出された……なのか?

撤退の理由としては、一般的にはSANSAARが、商業的に上手く行っておらず、現在の15チームでカンファレンス制にするよりも、14チーム制にして総当たり戦にしたということになり、1チーム減らすのにサンウルブズを除外しようということになっている。

SANSAARの中でもオーストラリアは支持、ニュードジーランドは中立だったが、遠征費用などがかさむ南アフリカがサンウルブズの排除に動いたようだ。

もともと、南半球の南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチンのスポーツリーグにそれほど潤沢に資金があるわけではなく、日本、そしてアジアンマネーに期待感があって、サンウルブズの参加を許したという面もあったから、その資金的な流入も少なかったのだろう。

そういうことを考えると、たぶん『勝てない』という事情はそれほど問題ではないと思う。特に昨年、そして今年のサンウルブズは、それほど圧倒的に『弱小チーム』でもない。

『日本人が少ない』という批判も国内にはあったが、島国で割と単一民族をありがたがる日本と違い、南半球の国々は多種多様な民族で構成されており、彼らがそこをあまり問題にするということはないだろう。

一番の問題は、日本とアジアでラグビーブームを起し、スーパーラグビーに大きな資金流入を起すということができなかったことにある……と思っていいと思う。

ただ、このあたりの情報を客観的に出してくれている日経の谷口さんの記事を読むと、南アフリカばかりが悪いのかどうかは微妙な感じがしてくる。

会見の動画を見ても、坂本専務理事の答弁は「『SANZAAR』が無理難題を押し付けて来た……」という風に聞こえるが、そもそも日本ラグビー協会側が『2019年ワールドカップに向けての強化の一施策』以上のプランを持って考えていたのか疑わしい。

増してや日経の谷口さんが書いているように、そもそもラグビー協会の権力者である森喜朗氏がスーパーラグビーへの反感を広言しており、日本ラグビー協会が撤退を前提にしていたのなら、この結果は無理もないとしかいえない。

日本は1年2カ月前に、南アフリカに泥をかけていた

さらに、谷口氏が昨年1月(つまり、1年2カ月も前!)に書いているこの記事では、日本の国際戦略自体がちぐはくであることが明らかにされている。

2019ワールドカップ決定の時の義理を果たすために、2023年ワールドカップ開催地決定の時の票を2票ともフランスに入れており、スーパーラグビーで一緒にやっているはずの南アフリカの顔に泥を塗っているというのだ。

これはでは、南アフリカが怒るのも無理はない。

誰が『サンウルブズの中心人物』だったのだろう?

しかし、思い返してみれば、本当に『誰がサンウルブズの支持者』だったのだろう?

ラグビーに関しては私は本当にただのファンに過ぎないし、どこかに取材したわけではないので、ただのブロガーの私見に過ぎないのだが、今、本当にそのあたりが疑問になってきた。

3年前に、サンウルブズスタートの時を支えたのは、堀江にカーク、そして、稲垣や木津、大野、真壁、田村や立川、山田といった選手たちだった。

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その初代サンウルブズメンバーで、現時点でピッチに立っている選手は多くない。もちろん、ワールドカップトレーニングスコッドの方に参加しているメンバーが多いのもたしかだが、『ミスターサンウルブズって誰?』って言われると、ちょっと首をかしげてしまうのも確かだ。まだ、たった3年と少ししか活動していないチームなのに。

チームの責任者だって、1年目はマーク・ハメット氏、2年目はフィロ・ティアティア氏、3年目はジェイミー・ジョセフ氏、4年目はトニー・ブラウン氏(しかも、日本代表のアタックコーチも兼任なので、たまにいなくなる)とコロコロ変わる。シロウト考えかもしれないが、これで一貫したチーム強化なんてできるんだろうか?

端から見ている感じではジャパンエスアールの渡瀬代表理事だけは、常にサンウルブズを背負って立ち、戦ってくれているように見える。ヒトコムや、三菱地所、三菱銀行、三菱自動車などは(どのぐらいの金額分担なのかは分からないけど)よくもスポンサードし続けてくれたものだと思う。

もしかして、サンウルブズはJRFUの鬼子だったのか?

で、本当にシロウトとしての疑問なのだが、誰がサンウルブズとして戦ったのだろう?

考えてみたら、日本のトップリーグチームにとって、本当はサンウルブズは邪魔な存在ではなかったのだろうか?

両方に参戦している選手のサラリーや、社会的な保証は、どちらのチームからどのぐらい出ていたのだろう?

2015年時点での五郎丸のサラリーが、年間で700万円だったと聞く。彼ほどのトップ選手でさえその金額ということは、他のトップリーグ選手のサラリーだって、それを大きく超えるものではないだろう? では、サンウルブズは参加選手にどのぐらいのサラリーを払っていたのか?

トップリーグのチームにとっては、ギャランティを払っている選手を、メンテナンスしたいシーズンオフに連れていってしまう厄介な集団と思われてはいなかったのだろうか? さらに怪我でもされた日にはたまったものではない。選手の日常のトレーニングにもお金はかかる、その大半を所属トップリーグチームが支払っていたのではないか?

また、スーパーラグビーが来て、サンウルブズがいれば、トップリーグは『トップ』のリーグではなく、格下の扱いになってしまう。それで不利益を被る人はいなかったのだろうか?

たとえば、たとえばトップリーグチームからの具体的なスポンサードがサンウルブズになくても、選手たちを貸してくれているトップリーグ16チームもマークをジャージに入れるとかして、その支持を得てることを表明することはできなかったのだろうか?

そう考えてみると、実は最初からサンウルブズはとても孤独な狼だったことに気付かされる。

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トップリーグの16企業さえ味方につけられなければ、前述のように、日本企業やアジアの企業のスポンサーフィーをスーパーラグビーに向けることなどできるハズもない。

取材できる立場にはないので、ただの印象論でしかないが、このあたり本当はどうだったのだろう?  ラグビーメディアの方々にはぜひ取材していただきたい所存。

もう、今さら、いろんな不和を掻き出してもしょうがないのかもしれないが、2019ワールドカップ後、2020サンウルブズ後、どうなるかを考えると、ラグビーメディア諸兄には、ぜひそのあたりを取材していただきたいです!

大好きなサンウルブズを最後まで応援しよう!

僕は2015年以降のにわかラグビーファンだ。

でも、『お国のため』という看板を背負う日本代表ではなく、『企業のため』という看板を背負うトップリーグチームではなく、ただ、ファンのため『サンウルブズ』というチームのために集まる、人種を問わずスクラムを組んで戦う狼たちの大ファンになった。

ライン際を駆け抜ける福岡堅樹に、クルリと回ってトライラインに飛び込む山田章仁に、負傷を押して仲間を鼓舞するカークに、パワーとスピードで大和魂を体現するマイケル・リトルに、ファンデンヒーファーに心躍った。

このチームをあと2シーズンしか応援できないことが残念でならない。

他のリーグへの参戦も検討されるというが、この足下の問題が片付かない限り、どこに行っても孤独な戦いを強いられる気がする。

ファンとしては何らかのカタチで継続されることはもちろん望む。でも、JRFUなり、どこかの組織なりにしっかりと責任を持ってばっくアップして欲しい。

とにもかくにも、あと、2シーズン、サンウルブズは戦い続ける。

その2年で、SANSAARがサンウルブズを排除したことを後悔するような、爪痕を、牙の跡を戦跡として残して欲しいし、僕らファンも最後の最後まで、応援し続けたい。

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あの狼の遠吠えを、歓喜の声を、僕らは忘れない。

追記:向風見也さんが、全文書き起こして下さってます。やっぱり、全文見るとちょっと印象が違う。どうだったんだろう……いろいろ知りたい。