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最強アイルランドに勝ったが、スコットランドに勝たないと決勝リーグ進出は難しい!【RWC2019】

今のところベストなシナリオだが

アイルランド戦の勝利に日本中が沸き立ったが、では、日本は決勝リーグに進めるのか? 考えてみよう。

まず、前提として、サモアだって強いし、スコットランドも格上だ。全然勝てる保証なんてない。

ただ、戦前の予想として、ロシア、サモアに勝ち、アイルランドには負け、最後スコットランドになんとか勝って決勝リーグに進むのが日本の目標……と思っていた人が多いと思う。

が、最後に負けられない戦いが来ると選手も追いつめられるし、プレッシャーがかかる。アイルランドに全力をぶつけて勝利した……というのは、本当にベストなシナリオだといえるだろう。

スコットランドに勝てば何も問題はないのだが

予想するとすれば、サモアにはまず必勝という前提で話を進めるしかない。油断は大敵だが。

その上で、スコットランドに勝てば、満額回答。1位で決勝リーグに進める。

スコットランドに負けると、話はややこしくなる。プールAでは、アイルランド、スコットランド、日本が1敗で並ぶ。となると、またしてもボーナスポイント(BP)が問題になってくる。

現時点でアイルランドはBP2、サモアとロシアに4トライ以上取れば、BP4が取れる(つまり日本、アイルランド戦で最後にボールを蹴り出した判断は正解だったということだ)。1位通過の可能性が一番高い。

日本は、アイルランド戦ではBPを取り損なっているし(4トライしてない)、サモア戦で取るとしても、スコットランド戦で(負けるということは)取れないとしたら、2ポイント。僅差で負けたら3ポイント(4トライ取って負けるという可能性もなくはないが)。

スコットランドは、まだサモアとロシアの戦いを残してるので、ここでそれぞれBPを取るとすれば2ポイント。

スコットランドに負けると急に分が悪くなる

他にアップセットが起こらず、日本とスコットランドが、ロシア、サモアにそれぞれBPを取ったという前提で考えよう。

スコットランド戦に負けた場合、スコットランドに4トライ以上取らせずに、日本の敗北が7点差未満であれば、日本が決勝リーグに行けるが、それ以外の条件では決勝リーグにコマを進めるのはスコットランドになってしまう。

BPが同点の場合、直接対決の勝者が決勝リーグにコマを進めるというルールがあるからだ。

3勝して決勝に進めない2015の再現だけは避けたい

スコットランド戦、まず日本は負けないこと。そして、負ける場合には僅差(7点差未満)の戦いに持ち込むこと、4トライ以上を取らせないこと……その戦いのBP争いに、勝利すること(同点ではダメ)が重要になる。

まさか、2大会連続で3勝したのに決勝リーグに進めない……なんていう悪夢はないとは思うが、相手はあのスコットランド。本当に油断はできない。

しかし、まずその前にサモア戦に4トライ以上取って勝利することが大前提。ここが、台風で非開催(となると、両者2ポイントずつ)なんてことになると、目も当てられない。

最強アイルランドに勝っても、まだまだ油断できない日本のベスト8進出なのである。

(村上タクタ)

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現時点でのアップセットはたったの2戦【RWC2019】

いかに、ラグビーではアップセットが起こらないか

『日本、アイルランド戦に勝利!』のニュースの興奮が冷めないが、開幕から9日経った現時点(9月29日夕方)での状況を整理してみよう。

現在まで行われたのは、予選プール40戦のうち16戦。

そのうち、アップセットが起ったのはたったの2戦。これだけ、激戦、盛り上がる戦いが続いているというのにだ。

いかに、ラグビーという競技で、アップセットが起こりいくいかを物語っている。

その2戦中1戦は、もちろんアイルランドを倒した日本。ランキング2位のアイルランドを10位の日本が倒した。これほどのアップセットは、ワールドカップではまず起こらないといっていい。

ちなみに、2015年の南アフリカを日本が倒した時のランキングはそれぞれ3位と13位。しかし、あの時は、南アは32年間で1勝しか挙げていない日本を明らかに甘くみて、メンバーを落として来ていたし、油断があった。今回は油断のないフルメンバーのアイルランドを力でねじ伏せたのだから、『ブライトンの奇跡』より『シズオカの衝撃』の方が、驚きだといっていい。

もうひとつのアップセットは、釜石の鵜住居でウルグアイがフィジーを破った。戦い。フィジカルで優位なフィジーを、綿密に用意してきた無名国のウルグアイが破った戦いだった。

「特別な場所で、特別な出来事が起こりました」という藤島大さんのコメントが、深く染み入った戦いだった。

起こりそうで、起こらなかったアップセット

これら2戦は大きくランキングの離れた国同士のビッグアップセットだったが、逆にフランスvsアルゼンチンについては、ジャガーズでスーパーラグビーに参戦し、世界ランキング以上の実力を持つアルゼンチンが勝つ可能性が高いのではないかと思っていたが、逆転に次ぐ逆転の末、フランスが23-21で勝利を収めた。

決勝リーグに残る8チーム、異変が起こすとしたら、アルゼンチンかと思ったが、現時点では日本が意見を起す可能性の方が高そうだ。

……などと、書いている現時点でも、ウェールズをオーストラリアが猛追している(67分時点で26-25)。これも実力伯仲ではあるが、オーストラリアが勝てばアップセット。

ワールドカップはまだまだ面白そうだ。

※ワールドラグビーランキングは、開幕してからも刻一刻と変わっているが、本記事では9月4日時点でのものに基づいて執筆した。

(村上タクタ)

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2年前、日本代表のキック戦術を酷評したのは僕らだった【RWC2019】

2015の戦術『継続』こそが、評価されていた

4年前の南ア戦以降、急に熱心にラグビー観戦しはじめたニワカだが、そういえば、「どこのメディアも書いてくれないな」とい思うことがあるので書いておく。

2015のエディージャパンは、ひたすら継続するラグビーを旨としていた。

これまでの日本代表にないほど、フィジカルを鍛え、スクラムサイドを突き、バックスに回し、延々とフェイズを重ねて、相手のほころびを待つ。

巨大な相手に複数でアタックし、それでも数的優位を保つために、モールやラックに長いせずに素早く起き上がる。タックルして、そのまま回転して起き上がり、ポジションに戻る。そんな、日本人、日本チームに可能な、素早さと根性を磨き上げた戦術だった。

テレビで繰り返し放映させる、南ア戦の五郎丸や、カーン・ヘスケスのトライシーンも、そんな情景のはずだ。

僕らはみんな「蹴るな!」と言った

現監督のジェイミー・ジョセフが日本監督のヘッドコーチになった時、正直、前職のエディさんほど、明確なコンセプトを感じなかった。こんな監督で2019年のワールドカップは大丈夫なんだろうか? と思った。

2017年の日本代表と、サンウルブズは、急にキック戦術を取り入れた。

スタンドオフのが敵ラインの後ろ側にキックをするのだが、多くの場合敵ボールになって、逆襲を受け、逆にこちらのラインを突破され、トライされる結果になった。

そりゃもう散々だった。

僕をはじめ、多くのファンは「蹴るな!」と思った。

ボールを蹴って、マイボールを失い、トライされて負け続けるサンウルブズの作戦を疑問に思ったし、TwitterにはJJ(ジェイミー・ジョセフ)の戦術に対する罵詈雑言が並んだ。

「日本の性質を活かすには、フェイズを継続する、ボールを放さないラグビーの方がいい!」「キックして、敵にボールを渡してどうする!」との意見に、JJは「フェイズを重ねるだけでは、強豪国に力負けしてしまう。キックを使えねばならない」とかたくなだった。

しかし、サンウルブズの敗北は続いた。サンウルブズと日本代表の2枚看板も上手くいっていないように思えたし、ついには、弱かったことと、経済的メリットを与えられなかったことで、サンウルブズはスーパーラグビーを放逐されるに至った。

大勢の日本代表候補から絞り込まれていった

それが、いつの間にか局面が変わっていた。

サンウルブズと、NDS(日本・デベロップメント・スッコド)という100人近い広大な日本代表候補を鍛え、徐々にメンバーを絞って行った。

継続する2015の作戦と違うわけだから、違う選手が選ばれる。「なぜ、山田を外すのか!」に代表される、ベテラン選手を擁護する意見がまたTwitterにあふれた。

しかし、JJは、「キックを含む戦術」を遂行できるメンバーを主眼に置いたセレクトを行った。また、4試合をスコッド内で遂行しなければならないということで複数のポジションでプレイできる選手を選んだ。ロック、フランカー、8を担当できる姫野、フランカーとプロップが担当できる中島イシレリ、ウイングとフルバックの松島、スタンドオフ、CTB、フルバックの松田などがその代表だろう。そういえば、フランカーとセンターを兼務可能だったラボーニ・ウォーレン・ボスアヤコが間に合わなかったのは実に惜しかった。

フィジカルに長けたアイルランドのアタックを止めるべく選ばれたような、メンバーチョイスを考えると、ボニーがいればきっとセンターで活躍してくれただろうにと実に残念だ。

ついに、キック戦術が花開く

話が逸れた。

スコッドが、41人に絞られた頃には、信じられないことにキック戦略は実に上手く作用するようになっていた。

できるだけ深く蹴り敵を大きく下がらせるキック、ラインの背後に落としアンストラクチャーを作るキック、ハイパントでラファエレや松島などフィジカルに長けた選手に競られるキック、そして田村の天才的なコントロールが可能にする、レメキや福岡に対するキックパス、流が得意とするスクラムハーフからのボックスキック。

フィジー、トンガ、アメリカ代表と戦ったパシフィックネーションズカップでは、キック戦術は見事に花開いていた。(その後の南ア戦は敗北したが、強豪向けのサインプレーはバレないように禁じ手になっていただろうから、それは仕方がない面もある)

思えば、4年前の戦術ではアイルランドに勝つのは文字通り不可能だったと思う。しかし、今の戦術では可能性は高くはないが、あると思う。10%か、20%か、決して楽観できないのは確かだが、全般にフィジカルに長けた選手が揃えられてるし、ディフェンス時にアイルランドの縦突破をしっかり止めて、攻撃時に田村にキックをする余裕さえ与えられれば。

何が言いたかったかというと、2~3年前、キック戦術を批判して悪かった。田村のキックセンス、蹴り分けられるキックの着地点に入れるバックス、すぐにフォローに入れるフォワード、それを80分間続けられる体力をもって、日本代表の新たな戦術は、2015の『継続』よりはるかに強力になっていると思う。

28日土曜日。3年間かけて花開いたキック戦術で、『エコパの奇跡』が見たい。