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2年前、日本代表のキック戦術を酷評したのは僕らだった【RWC2019】

2015の戦術『継続』こそが、評価されていた

4年前の南ア戦以降、急に熱心にラグビー観戦しはじめたニワカだが、そういえば、「どこのメディアも書いてくれないな」とい思うことがあるので書いておく。

2015のエディージャパンは、ひたすら継続するラグビーを旨としていた。

これまでの日本代表にないほど、フィジカルを鍛え、スクラムサイドを突き、バックスに回し、延々とフェイズを重ねて、相手のほころびを待つ。

巨大な相手に複数でアタックし、それでも数的優位を保つために、モールやラックに長いせずに素早く起き上がる。タックルして、そのまま回転して起き上がり、ポジションに戻る。そんな、日本人、日本チームに可能な、素早さと根性を磨き上げた戦術だった。

テレビで繰り返し放映させる、南ア戦の五郎丸や、カーン・ヘスケスのトライシーンも、そんな情景のはずだ。

僕らはみんな「蹴るな!」と言った

現監督のジェイミー・ジョセフが日本監督のヘッドコーチになった時、正直、前職のエディさんほど、明確なコンセプトを感じなかった。こんな監督で2019年のワールドカップは大丈夫なんだろうか? と思った。

2017年の日本代表と、サンウルブズは、急にキック戦術を取り入れた。

スタンドオフのが敵ラインの後ろ側にキックをするのだが、多くの場合敵ボールになって、逆襲を受け、逆にこちらのラインを突破され、トライされる結果になった。

そりゃもう散々だった。

僕をはじめ、多くのファンは「蹴るな!」と思った。

ボールを蹴って、マイボールを失い、トライされて負け続けるサンウルブズの作戦を疑問に思ったし、TwitterにはJJ(ジェイミー・ジョセフ)の戦術に対する罵詈雑言が並んだ。

「日本の性質を活かすには、フェイズを継続する、ボールを放さないラグビーの方がいい!」「キックして、敵にボールを渡してどうする!」との意見に、JJは「フェイズを重ねるだけでは、強豪国に力負けしてしまう。キックを使えねばならない」とかたくなだった。

しかし、サンウルブズの敗北は続いた。サンウルブズと日本代表の2枚看板も上手くいっていないように思えたし、ついには、弱かったことと、経済的メリットを与えられなかったことで、サンウルブズはスーパーラグビーを放逐されるに至った。

大勢の日本代表候補から絞り込まれていった

それが、いつの間にか局面が変わっていた。

サンウルブズと、NDS(日本・デベロップメント・スッコド)という100人近い広大な日本代表候補を鍛え、徐々にメンバーを絞って行った。

継続する2015の作戦と違うわけだから、違う選手が選ばれる。「なぜ、山田を外すのか!」に代表される、ベテラン選手を擁護する意見がまたTwitterにあふれた。

しかし、JJは、「キックを含む戦術」を遂行できるメンバーを主眼に置いたセレクトを行った。また、4試合をスコッド内で遂行しなければならないということで複数のポジションでプレイできる選手を選んだ。ロック、フランカー、8を担当できる姫野、フランカーとプロップが担当できる中島イシレリ、ウイングとフルバックの松島、スタンドオフ、CTB、フルバックの松田などがその代表だろう。そういえば、フランカーとセンターを兼務可能だったラボーニ・ウォーレン・ボスアヤコが間に合わなかったのは実に惜しかった。

フィジカルに長けたアイルランドのアタックを止めるべく選ばれたような、メンバーチョイスを考えると、ボニーがいればきっとセンターで活躍してくれただろうにと実に残念だ。

ついに、キック戦術が花開く

話が逸れた。

スコッドが、41人に絞られた頃には、信じられないことにキック戦略は実に上手く作用するようになっていた。

できるだけ深く蹴り敵を大きく下がらせるキック、ラインの背後に落としアンストラクチャーを作るキック、ハイパントでラファエレや松島などフィジカルに長けた選手に競られるキック、そして田村の天才的なコントロールが可能にする、レメキや福岡に対するキックパス、流が得意とするスクラムハーフからのボックスキック。

フィジー、トンガ、アメリカ代表と戦ったパシフィックネーションズカップでは、キック戦術は見事に花開いていた。(その後の南ア戦は敗北したが、強豪向けのサインプレーはバレないように禁じ手になっていただろうから、それは仕方がない面もある)

思えば、4年前の戦術ではアイルランドに勝つのは文字通り不可能だったと思う。しかし、今の戦術では可能性は高くはないが、あると思う。10%か、20%か、決して楽観できないのは確かだが、全般にフィジカルに長けた選手が揃えられてるし、ディフェンス時にアイルランドの縦突破をしっかり止めて、攻撃時に田村にキックをする余裕さえ与えられれば。

何が言いたかったかというと、2~3年前、キック戦術を批判して悪かった。田村のキックセンス、蹴り分けられるキックの着地点に入れるバックス、すぐにフォローに入れるフォワード、それを80分間続けられる体力をもって、日本代表の新たな戦術は、2015の『継続』よりはるかに強力になっていると思う。

28日土曜日。3年間かけて花開いたキック戦術で、『エコパの奇跡』が見たい。