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そう簡単には南アには勝てない【RWC2019】

レイドローめ、泣かせやがる!

スコットランド戦は感無量なので、言うことはありません。
 
2015年南アの奇跡の直後に大敗。さらに僕が初めて見に行ったテストマッチである2016年の味スタでの試合でも16-21と敗北。
 
グレイグ・レイドローには本当に煮え湯を飲まされ続けてきたので、常にツンと澄ました彼を本当に憎く思っていたのだが、インタビューでは「日本は本当に素晴らしかった」と言いつつ、ポロポロと涙をこぼした彼の澄ました顔の下にある気持ちに心打たれて急にファンになった。レイドロー、カッコええ!
 
というわけで、スコットランドは本当に日本がこの4年間勝ちたかった国。素晴らしい試合だった。
 
というわけで、次は南アフリカ。

テレビ見てると、意外と南アに勝てると思ってる怖さ

オールブラックスの強さは知れ渡ってますが、南アは「前回勝った国」という認識で、テレビ見てると、なんとなく今回も勝てるだろうと思っている人がいてビックリ。勝てるワケがないのに、勝ったから奇跡なのに。
 
8強に出そろった、イングランド、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、ウェールズ、フランス、南アフリカはいずれも、超強豪国です。天下一武道会でいえば、並の人間やクリリン達が敗退したあとに残ってる、スーパーサイヤ人とモンスター級の選手しかいない状態だ。
 
人種差別政策が終わって95年に初出場して以来、7大会、日本にとって悲願だったベスト8は一度も逃したことがない……つまり当たり前です。優勝2回、3位2回。

前回の勝利を貶める気はないが、南アのメンバーはほぼフルメンバーだったとはいえ、南アに油断がなかったとはいえない。対して、今度の南アに油断は微塵もないだろう。

南アにはスーパーラグビーのチームが、ライオンズ、ブルズ、シャークス、ストーマーズの4つある。中でもライオンズは2015〜2018年の3年間に渡って、ハリケーンズやクルセイダーズといったオールブラックスのメンバーを大勢擁するニュージーランドのチームと、決勝を戦ったチームだ。

(文字通り)『ビースト!』

そんな、4チームのメンバーが集結してるのが南アフリカ。キャプテンは、フランカーのシヤ・コリシ。ロックには2m超の選手が4人。エベン・エツベス、ルード・デヤハー、ピーター=ステフ・デュトイなど、いずれも(文字通り)世界最高峰のロックだ。プロップのテンダイ・ムタワリラは彼にボールが渡って走り出すと『ビースト!』との掛け声が上がるまさにビースト級の選手。117kgの体重で野獣のように駆けてくる破壊力はまさに世界一。

余談だが、今回横浜でリーチがボールを持つと『リーチ!』との声が上がっていたが、あれはテンダイ・ムタワリラの『ビースト!』を模してるんだと思う。

南アフリカはもともとフォワードの評価の高いチームだが、多彩なキックを得意とするスタンドオフのエルトン・ヤンチース。最近評価急上昇中のスクラムハーフ、ハーシェル・ヤンチースが加わって、バックスの攻撃力も凄まじくなっている。ハーフにはベテランのファフ・デクラーク。超突破力のあるCTB、ジェシー・クリエル、日本のWTBに負けずに速く、さらに突破力のあるマカゾレ・マピンピ、スブ・ヌコシ、ウィリー・ルルーなどのスター選手がラインを構成する。

はっきりいって、ここからは、一試合一試合が、敗北即終了なので、超強豪国が最初から情け容赦なく来る。ゴングが鳴った瞬間から、スーパーサイヤ人モードってことだ。

日本代表は重い8強の扉を開けたけれど、扉の先は文字通り『人外』の強さの世界。

アイルランドとスコットランドについては、コーチ陣が何年も研究して、弱点を探って、選手たちもそのためのトレーニングをしてきたからこそ勝てたが、ここから先はそれが、多分ない。

南アの研究をどのぐらいしているか? 想定した練習をどのぐらいしているかが勝負の鍵になってくるだろう。

逆に、ワールドカップ直前の練習試合で7-41で惨敗していることは、あまり気にしなくてもいいと思う。あの試合で日本は、ほとんど手数を出さなかった。田村も迂闊なところに蹴っているように見えたが、ワールドカップのために用意されていた作戦は使用を禁じられていたのではないかと思う。だから、ちょっとぼんやりとした敗北になった。

日本には手立てはあると思う。しかし、本気の南アフリカに勝てる可能性は1/3もないと思う。

勝利に湧いてる日本が意気消沈しないか心配だが、負けても落胆する必要はない。日本代表が立ち入った領域は、それほどの強豪たちの世界なのだ。

南アに勝って欲しい個人的理由


もうひとつ、個人的には意識するものがある。
日本代表の躍進を支えた、日本のスーパーラグビーチーム・サンウルブズは2020年度限りでスーパーラグビーから除外される。

対戦のための移動コスト(日本への)がかかり過ぎる、サンウルブズが弱過ぎて勝負にならない、もともとサンウルブズを入れたのはアジアマネーを期待してのことだったのに、思ったほどアジアでラグビーが普及しなかった……ということなのだが、この意見を後押ししたのが南アフリカだったのだ。

これは、南アが2019のワールドカップに立候補したのに日本に負け、2023年のワールドカップこそはと思っていたのに、日本がフランスに票を投じたことに対する意趣返しだという話もある。

一方、JRFUや、トップリーグのチームは、もともと2019年ワールドカップの日本代表強化のためにサンウルブズを作っただけで、それ以降サンウルブズを継続させる気はなかったとの声もある。

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展開し、継続し、ラインの背後にキックし、群れのチームワークで狩りをする、今の日本代表の戦い方は、明らかにサンウルブズで培われたものだし、稲垣、堀江、姫野、マフィ、田村、田中、トゥポウ、リーチ、松島、ヴィンピー、ラブズカプニ、中村、そしてもちろん福岡など、多くの選手はサンウルブズに籍をおいて戦っていた。

サンウルブズの未来は閉ざされたままだが、日本が勝ち続ける、とりわけ南アに勝つことで、「これでも、スーパーラグビーに日本のサンウルブズは不要なのか?」と問いかけることができるような気がする。

前述の通り、決してたやすい戦いではないけれど、可能性はゼロではない。可能性は高くはないとは思っているけれど、夢を終わらせないために、ぜひ南ア戦に勝って欲しいと思っている。

(村上タクタ)