4戦でピッチに立ったのは、わずか26人
今、ラグビー日本代表として登録されているのは31人。そのうち、試合ごとに23人が登録され、15人がスタメンとして試合開始時から試合に出る。
今の日本代表は一戦たりとも手を抜けない状態で戦っているから、常にその時点でベストの選手を選んでいる。まだ、木津、北出、徳永、茂野、アタアタの5人は、試合に出られていない。が、決勝トーナメントに進んだことで、チャンスがあるかもしれない。
今回は、このトータルのスコッド31人に絞られるまでの話をさせて欲しい。
年初には100人を越える候補がいた
現時点で、桜のジャージを着ているのはたった31人だが、約1年前ぐらいまでは100人を越える候補がいた。
通常は、もっと絞り込んで、トレーニングをするのだと思うが、ジェイミー・ジョセフHCの方針で、非常に広いメンバーを候補として競わせたのだ。
特に今年の前半は、RWCTS(ワールドカップトレーニングスコッド)、サンウルブズ、NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の3チームでそれぞれ活動をしていた。
RWCTSは正代表に近い感じ。
サンウルブズはスーパーラグビーで毎週NZや南アの選手と戦えるので、激しい実戦感を養う必要があるメンバーが送り込まれた。
NDSは将来に向けての可能性を探る感じで、アジア諸国と戦ったり、スーパーラグビーのサブチームと試合したりした。ここは若手選手発掘のために使われた感じ。中島イシレリや、木津、北出などはここ選ばれた選手だ。
100人超から、徐々に41人に
そして、8月15日(つい最近だ)に41人に絞り込まれ、8月末に現メンバーの31人が発表された。
(BGMはリトグリのECHOで読んで下さい)
去年の今頃だと、もっと多くの選手が日本代表候補だったし、少なくとも初夏ぐらいまでは100人ぐらいが日本代表候補として、今のメンバーと切磋琢磨していた。
たとえば、今テレビの解説に回ったりしてラグビーワールドカップ盛り上げに貢献しているサントリーの畠山健介や、前ワールドカップで活躍した、真壁伸弥、山田章仁、ホラニ龍コリニアシも候補に入っていたはずだ。
日本ラグビーを盛り上げるべく、笑顔でマイクを握ってくれているが、本心はピッチに立ちたかったろうし、悔しいはずだ。
非常に大きな人数から絞り込んだから、8月15日からの合宿に、41人が選ばれた時も、悔し涙を飲んだ選手も数多い。
クルリを身体を返す『忍者トライ』で人気を博した山田章仁が選ばれなかったのは不思議だったし、日本代表の切り込み隊長だったハルこと、立川理道が選ばれなかったのは、僕らだって悔しかった。
優秀な日本人選手が数多いフロントローは特に争いが激しく、バズこと浅原拓真、垣永真之、日野剛志、庭井祐輔など、本当に誰が日本代表として出てもおかしくない巨漢のタフガイたちが落選したのは本当に残念だった。
このポジションはもともと、日本人選手が多かったのに(逆にロックなどは日本人の選手だけでは、ワールドクラスで戦うのは難しい)、最終的に具選手や、中島イシレリ、ヴァルアサエリ愛など海外出身の選手がメンバーとなったのはむしろ意外な選択だった。
スクラムハーフのメンバー争いも激しく、現3人の他にも、矢富勇毅選手、日和佐篤、内田啓介がいた。フランカーの金正奎も日本代表にいて欲しい選手だったし、バックスでいえば、山沢拓也、梶村祐介、藤田慶和なども可能性はあった。
また、日本代表候補として考えられていたが、日本代表資格が得られなかった選手として、ラーボニ・ウォーレンボスアヤコが挙げられる。ジェイミーHCは彼を、No.8だが、センターとしても使える選手として育てようとしていた。実現していれば、No.8もカバーしつつ、猛烈なフィジカルで突破するセンターが1枚加わったに違いない。
その他にも、日本居住期間の問題でまだ参加できない選手として(本人に日本代表になる気があったのはは私は知らないが)、超天才キッカーのヘイデン・パーカー、エドワード・カーク、ウィリー・ブリッツ、マイケル・リトル、ホセア・サウマキ、セミシ・マシレワ、などの選手が挙げられる。いずれも、サンウルブズのために身体を張ってくれた選手たちで、日本代表になっていれば、ヴィンピー・ファンデルバルトや、ピーター・ラブスカブニのように活躍してくれたに違いない。
31人にするために、最後に切られた10人
最後、8月末に、41人から31人に絞られた時は、もっと辛かった。本当に辛かった。
ここで落選したのは、石原慎太郎、三浦昌悟、山下裕史、山本幸輝、堀越康介、アニセ・サムエラ、布巻峻介、梶村祐介、ティム・ベネット、野口竜司の10人。
4年に渡って、今の日本代表と一緒に戦い、合宿を行い、厳しいトレーニングを行い、紅白試合で戦い続けたメンバーだ。今の日本代表は本当に強いが、この10人の誰が選ばれたって、同じように活躍したと思う。なのに、最後の最後に選ばれなかったのだ。
特に、山下と布巻は、筆者にとってもずっと応援してきた選手なので、本当に出て欲しかった。
(ここで、BGMは米津玄師の『馬と鹿』に)
桜の戦士たちが勇敢なのは、ここにいない仲間の思いを背負っているから
ジェイミーHCと、リーチ・マイケルが本当の意味で修羅になったのはこの時だと思う。
敵と戦う前に、仲間を切らねば前に進めないのだ。
31人のメンバーを発表する時のジェイミーHCは本当に辛そうだった。日本代表が選ばれる晴れの日なのに、笑顔など微塵もなかった。選ばれたメンバーも、嬉しいはずだが笑顔はなかった。
選ばれなかったメンバーは、すぐに荷物を持って合宿所を去った。どんなに辛かったろうか(この時のメンバーには共に戦うOne Teamの証として、リーチから日本刀渡されたのだそうだ)。選手によっては、年齢的に次の機会はないはずだ。
今の日本代表に決して浮ついたところがないのは、その10人、そしてさらにその背後の60人以上もの候補の想いも、くやしさも、努力も背負っているからなのだ。
堀江のタックルが鋭いのは、バズや、日野の想いが背後にあるからだ。稲垣がアイルランドの巨大なフォワードの壁にも立ち向かえるのは、山下や、布巻が背後から後押ししているからだ。トモさんや、姫野が何度でもタックルしてすぐに立ち上がってまたタックにいけるのは、このピッチに立てない仲間の想いを知っているからだ。
選ばれなかった選手は、あの世界が注目するピッチに立てないと分かった後も、相手となるチームを研究し、仮想敵となって練習相手としてグラウンドに立ち続けているという。まだメンバーとして出ていない徳永も、ウォーターボーイとしてベンチとグランドの選手の情報のやりとりをサポートしつづける。単なる伝令ではなく、グランドに立つ選手と完全に同じレベルで戦術を理解しているのだから、当然話は早いし正確だ。
60分を過ぎ、一番、苦しい時間帯。息が上がり、心臓は限界を訴え、太もももが上に上がらなくなった時にさえ、中村や、ラファエレ、松島や、福岡になおも全力疾走をさせるのは、野口や、梶村、出られなかった選手たちの想いのはずだ。
ワールドカップが始まってからラグビーファンになった人にも、ぜひそれを知って欲しい。そして、いつか彼らに逢うことがあったら、感謝を伝えて欲しい。「日本代表の大躍進はあなた達のおかげです!」と。
ジェイミーHCやリーチが鬼になるのは、もう最愛の味方を切ってあそこに立ってるからだ。具や、田中や、田村は、それを背負ってグランドで戦っているのだ。
だから、日本代表は強い。きっと南アにも正面切って立ち向かっていくはずだ。一歩も引かない日本代表の向こうに、さらなる扉が開かれるはずだ。そう信じている。
(村上タクタ)
※敬称略です。すいません。
※趣味のブログなので、一部不正確なところがあるかもしれません。間違ってたらごめんなさい。ご指摘下さい。修正します。取材して書いているわけではないので、一部妄想が入っています(笑)ご容赦を。