日本が史上初めて進出した準々決勝。その死闘が終わって30分が経っても、誰も帰ろうとはしなかった。
まるで、夢が終わったことが信じられないみたいに。
いつまでも、拍手は鳴り止まなかった。
勝機は本当になかったんだろうか?
3-26という最終結果をだけを見ると、そうは思えないかもしれないが、前半は拮抗した試合だった。
40分が終わって、3-5。
驚くべきロースコア。
日本は超強豪、南アフリカに勝つかもしれなかった。
チャンスがあったとすれば、前半『ビースト』こと、テンダイ・ムラワリラがシンビンを食らっている間だったろう。日本は何度も攻め込んだが、ペナルティキック1本を取るのがせいいっぱいだった。ここでトライを1本取っていれば、展開は違ったかもしれない。
いや、たらればは言うまい。
日本はフォワード戦でなんとか拮抗を保とうとしたが、やはり劣勢はいかんともしがたく、田村の魔法のタクトに冴えはなかった。
田村の調子が良くなかったようにも見えたが、やはりフォワードが一歩前進するか、一歩後退するかで、田村が呪文を唱える隙があるかないかの差が出るのだろう。
南アのバックスのディフェンスの出足が恐ろしく速く、結果的に中村、ラファエレはボールを繋げず、いいカタチで福岡や松島、レメキに渡ることはほとんどなかった。
戦術的には打つ手なし。では戦略的に勝ち目はなかったのか?
日本の頼みのフィジカルが後半炸裂することもなかった。むしろ、日本は後半の後半20分に足が重くなっており、さらに劣勢となった。
もちろん、自慢のフェラーリコンビも、マピンピ、コルビといったレーシングマシンを前にしては輝くことができなかった。
一時、福岡をスクラムハーフの位置において走らせたり、スクラムハーフからのパスを直接受けられる場所に配したりして、彼のスピードを使おうとしたが、それさえも完全にシャットダウンされた。
デクラークの出来があまりにも良かったとも思う。憎らしいぐらいに。
勝利の可能性はあったし、戦意は旺盛だったが、疲れはなかったろうか?
毎週連続、全身全霊の4戦の疲労が身体に蓄積していたのではないだろうか?
そういう意味では、26人で5戦を戦ったことは悔やまれる。経験を積ませたくて若手5人を連れてきたのだと思うが、結局使わないのなら、山下や、石原、バズ、布巻など、経験豊かなベテランを連れてきて、せめてサモア戦などで一部の選手を休ませた方が良かったのではなかったか。
いや、繰り言は言うまい。
日本代表は強かった。
しかし、油断がなく、本気で向かってきた南アは、さらに強かった。その本気を引き出せたということは、日本が世界のトップレベルのチームの領域に足を踏み入れたということでもある。
決勝トーナメントの頂上をめざすチームは、予選プールが終わって1段ギアを上げてきたが、日本代表にはそれを上回るギアはなかった。
プールの4戦を戦い切った日本と、もとより決勝トーナメントを戦い上がっていくつもりの国との差。これが、今の日本の立ち位置だ。
4年前からすると、あまりにもいい眺めではないか!
あまりにも大きな喪失感
トモさんは、日本代表を去る。福岡も15人制はこの南ア戦が最後となるはずだ。堀江も年齢的にも、古傷的にも4年後戦うのは難しかろう。田中もそうだ。リーチもそうかもしれない。
もちろん、トモさんのような例もあるから、頑張ってくれるなら、それに越したことはないが、多くの選手がこの戦いを代表戦の最後だと思って戦っているはずだ。
素晴らしかったラグビー日本代表の1カ月あまりの戦いは終わった。観戦している側としては、夢のような日々だった。
もっと最高のワールドカップを見るためにすべきこと
5週間の戦いの、一番の収穫は、日本中にラグビーの面白さを知る人が増えたことだろう。
これは本当に大きなレガシーで、これ以上日本代表が強くなるには、トップリーグやサンウルブズが強くならねばならず、そのためには、大学や、高校が、強く、そしてラグビースクールに参加する子供たちが増えなくちゃならない。そのために、面白さを知る人たちの人数が必要なのだ。
4年後、8年後、12年後、16年後のワールドカップで活躍するのは、今日の戦いに心打たれた若者、子供たちだ。
そして、ちゃんとそのために(不器用ながら)トップリーグも、サンウルブズも声を挙げている(このチャンスなのだから、ワールドカップを成功させたレベルのマーケティングのプロを、早急に巻き込んだ方がいいと思うが)。
【スーパーラグビー2020 試合スケジュール発表!】
2020シーズンはホームで7試合、その内、福岡・大阪で各1試合を開催予定です!
詳細はHPをご覧ください!https://t.co/hXt5JGNrqZ
選手、チケット等の情報は決まり次第HPで発表します!
#2020 #sunwolves #Awoooo— サンウルブズ/SUNWOLVES (@sunwolves) September 10, 2019
再来年が不透明なサンウルブズだが、SANZAARは日本のベスト8を見て、サンウルブズを追い出すのを撤回してくれないだろうか?
これだけラグビーの人気が高い日本になったのだから、南アのチームが来日するための資金ぐらいなんとかなりそうなものだが。
あと、無料で見られる地上波か、BSでの放映をやってくれないだろうか?
サンウルブズはちゃんとリクルーティングさえすれば、この史上最強の日本代表に、パーカーやボニーを加えた最強チームを作れるはずだのだが。それって、強くない?
最高な”ONE TEAM”#ラグビー日本代表 の #RWC2019 は幕を閉じましたが、 彼らのラグビーは続いていく…#ラグビー好き も 自称 #にわかファン も#ラグビー観戦新入部員 も スタジアムでラグビー観戦しませんか!☝️ 彼らが切磋琢磨するトップリーグは、 2020年1月12日(日)開幕!#topleague pic.twitter.com/TJVkjpXcl9 — ラグビートップリーグ2020.1.12開幕! (@JRTopLeague) October 20, 2019
トップリーグはトップリーグで、清宮構想プロリーグへの脱皮が図れるのかどうかという問題もあるが、こちらもテレビ放映など、メジャーになるための作戦を上手く展開して欲しい。
サントリーのマット・ギタウ、神戸製鋼のダン・カーター、ヘイデン・パーカーに加え、トヨタにオールブラックスのキアラン・リード、パナソニックにサム・ホワイトロックが入るなど、ワールドカップで活躍している超スーパースターたちもたくさん来日する。
上手く盛り上がるといいのだが。
あと、4戦、日本が目標とする強者の戦いを見守ろう
それにワールドカップはまだ終わっていない。
来週には、オールブラックスvsイングランド、ウェールズvs南アフリカ、再来週にはその勝者による決勝戦と、敗者による3位決定戦が見られる。
夢は終わらない。
まだまだ、続いていく。2023年のフランス・ワールドカップに向けて、日本の各リーグがどんな強化をして、どんな盛り上がりを見せていくのか、見守ろうではないか。
こんなに、ラグビーが面白いということに気付いた人が増えたのだから。
(村上タクタ)